有価証券報告書の株主総会前開示に関する要請の概要と今年度の対応のポイント

有限責任あずさ監査法人 会計・開示プラクティス部 シニアマネージャー 瀧澤 裕也

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1.はじめに

2025年3月28日に、全上場会社に対して、金融庁より加藤金融担当大臣名で「株主総会前の適切な情報について(要請)」(以下「要請文」という。)が発出され、有価証券報告書の株主総会前開示(以下「総会前開示」という。)を今年から実施することが要請されました。本稿では、主に有価証券報告書を定時株主総会の前日~数日前に提出する場合の留意点、次年度以降の取組および方向性について解説します。なお、本稿の意見にわたる部分は筆者の見解であり、所属する法人の見解ではないことについて、あらかじめお断りします。

2.要請の背景

総会前開示は、2009年に実施された企業内容等の開示に関する内閣府令の改正により実施が可能になりました。その上で企業による実施を推進するために、金融庁に設置された金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」等の会議体で議論がされたうえで、「投資家と企業の対話ガイドライン」の改訂や、企業における取組の推進を期待する旨の報告書での言及等がされていました(図表1参照)。このように、これまでも各省庁において普及に向けた取組が進められてきたものの、実施企業の増加には繋がらない状...