書評 弥永 真生著『会計監査人論』

(同文舘出版刊/本体3,200円+税)

甲南大学社会科学研究科 教授 伊豫田 隆俊

( 46頁)

金融商品取引法(以下,金商法)と会社法という性格を異にする2つの法律に基づく監査制度が併存することから,わが国には監査役,公認会計士それに会計監査人の3つの監査主体が存在するという,世界に類をみない状況になっている。そのため,会計監査人監査と金商法監査との関係をどのように考えていくべきか,今後どのように調整を図っていくべきかが重要な論点となることはいうまでもないが,他方で,これまでわが国の監査理論研究において会計監査人に焦点を当てた研究はほとんど行われてこなかった。

本書は,こうした辺境領域に位置づけられる会計監査人にスポットを当て,会計監査人の選任・解任・不再任・辞任(第2章),会計監査人の報酬(第3章),会計監査人が欠けた場合と一時会計監査人(第4章),民事責任(第5章),行政罰および刑事罰(第6章)について検討するとともに,平成25年改訂監査基準や不正リスク対応基準を契機として近年重要性が高まりつつある監査役と会計監査人との連携について概観し(第7章),国際監査基準・EU加盟国の状況を念頭に置きながら,その任務拡大の可能性について検討している(第8章)。

本書の特徴として,(1)監査...