<IFRS COLUMN>暖簾に腕押し 第48回 持ち合い株(その5)

 国際会計基準審議会(IASB)前理事 鶯地 隆継

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キセル

キセルをご存知だろうか。漢字では煙管と書く。刻みたばこを吸うための道具で,パイプのようなものであるが,西洋パイプと異なり,多くのキセルは,たばこを詰める雁首(がんくび)という部分と,吸い口が金属でできており,その間のラオと呼ばれる管の部分は竹などでできている。このように両端だけが金属(カネ)で,間にはカネがないので,不正乗車のことを俗語でキセルと呼ぶようになった。これは切符と定期券を利用した不正で,一般的な手口は,ある駅で入場券か一駅だけの切符で入場し,長距離を移動した後に,下車直前の数駅だけの定期券で降車するというものだ。カネを払って乗っているのは最初と最後だけで,その間の運行距離はカネのない無賃乗車となる。それがキセルの雁首と吸い口だけがカネなのと似ているので,このような不正乗車をキセルと呼ぶ。

一貫した評価方法の重要性

会計においては,資産の評価方法を途中で変えると,このキセルと似たようなことができる。特に公正価値評価差額を当期純利益で認識するFVTPLと,公正価値評価差額をその他の包括利益(OCI)で認識するFVTOCIとの二つの評価方法を,途中で変更できるとすると,キセルの...