役員の報酬・賞与・慰労金の基本と実務Q&A<223> 取締役会決議は不要か(1)

 弁護士 小林公明

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Q

当社株主総会が、退任取締役に対し内規(功労加算条項はあるが、減額不支給の定めなし)に基づく慰労金を支給する旨の一般的な慰労金議案を可決し、その具体的金額、支給時期等の決定を取締役会に一任する旨の決議をしたが、その後の取締役会において退任者の不祥事を理由に慰労金を支給しない旨決議したところ、当該退任者から当社に対し、取締役在任期間や報酬月額等を算入することにより機械的に算定できる基本額は株主総会決議により確定しているのだから支払えと請求されたが、どう対応すべきか。

A

1 結論

会社としては、取締役会決議を経ない限り慰労金請求権は発生していないものとしてその請求を拒絶するとともに、退任取締役の不祥事の有無とその内容及び会社が受けた損害等につき調査すべきである。

2 退任取締役の慰労金額の決定ルート

(1)事前取締役会決議

退任取締役の慰労金の額は、通常、次のような経路で決定される。

① 取締役会で株主総会に付議する慰労金贈呈議案を決定する    ↓② 株主総会で退任取締役の慰労金の額の決定につき取締役会一任の区分決議をする    ↓③ 取締役会において個別慰労金額を決議し,又は代表取締役社長に対し個...