Q&Aコーナー 気になる論点(371) IASBの適用後レビューのフィードバック(1)

‐金融資産の減損に関するリサーチ・パイプライン‐

早稲田大学 大学院会計研究科 教授 秋葉 賢一

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 国際会計基準審議会(IASB)は、2024年7月4日に、IFRS第9号「金融商品」減損の適用後レビューについて、「プロジェクト・サマリーとフィードバック・ステートメント」(フィードバック・ステートメント)を公表しました。この結果、何が新たなプロジェクトになり得るのでしょうか。

フィードバック・ステートメントでは、2つをリサーチ・パイプラインに追加すべき事項としています。1つは、減損の要求事項とIFRS第9号における金融資産の条件変更、認識の中止、直接償却の要求事項が交差することから生じる事項であり、償却原価測定プロジェクトにおいて行います。もう1つは、信用リスクの開示に関する一定の事項であり、IFRS第7号「金融商品:開示」の的を絞った改善を検討するプロジェクトにより実施する予定です。

〈解説〉

IFRS第9号の減損に関する情報要請

IASBが2023年5月に公表した情報要請「適用後レビュー:IFRS第9号「金融商品」減損」 では、世界的な金融危機において、以下のようなIAS第39号「金融商品:認識及び測定」の懸念が示されたとしていました(11頁)。

(1)発生損失モデルは、信用損失の認識...