証券取引等監視委員会における大量保有報告制度違反事案への対応について
証券取引等監視委員会事務局 開示検査課 開示検査調整官 横山 亞希子
証券取引等監視委員会事務局 開示検査課 課長補佐 澤村 泰行
証券取引等監視委員会事務局 開示検査課 証券調査官 坂部 裕哉
一 はじめに
上場会社の株券等につき、発行済株式総数の5%を超えて保有する者に対し、その旨の情報等の開示を求める我が国の大量保有報告制度については、1990年に旧証券取引法の下で導入されました。その後、2008年の金融商品取引法(以下「法」といいます)の改正により、大量保有報告制度の違反抑止の観点から、大量保有報告書等の不提出、重要事項の虚偽記載及び記載の欠缺が課徴金の納付命令の対象となりました(同年12月12日施行)。
しかし、法改正後も、法令の不知及び理解不足等により、年間約1,500件の大量保有報告書等の不提出等が相次ぎ、中には故意の不提出や著しい提出遅延の存在もうかがわれています。その一方で、大量保有報告書等の不提出及び虚偽記載等に対する課徴金納付命令の発出件数は、法改正から2022年まで、数件にとどまっていたため、大量保有報告制度の実効性が確保されていないのではないかとの指摘がありました ① 。
証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます)においては、2023年1月に公表した同年から2025年までの中期活動方針の中で、潜脱的な大量保有の事案を含む非定型・新類型の事案等に積極的に...
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