借地権を転貸して収受する地代から利益が生じない場合の貸付事業の当否

※ 事例の内容は発行日時点の情報に基づくものです

[質問]
 被相続人甲に相続が開始しました。
 甲が昭和35年に借地契約したA土地に関し、甲は地主に地代月額10万円を支払っています。
 甲は、その借地したA土地を甲の長女乙に転貸しています。乙は、その転借した土地の地代として甲に月額10万円を支払っています。
 甲の不動産所得の申告においては、乙への賃貸に関しての利益を零として申告していました。
 乙は、その転借した土地の上に3階建のB建物を平成14年に建築し、以後乙の所有となっています。
 そのB建物の3階に甲と乙が同居して、生計を一にしています。甲は乙に家賃を支払わず、無償で同居しています。
 1、2階は長女が賃貸の用に供しています。
 質問です。
1. 親族間の借地権の転貸借であっても、付近相場の賃料(地代月額10万円)の授受があるので、甲の転貸借地権の価額は、通常のとおりに評価(財産評価基本通達29、30)して差し支えないと考えますが、いかがでしょうか。
 自用地としての価額×借地権割合×(1-借地権割合)=転貸借地権の価額
2. 甲が乙に借地権を貸し付けていますが、相当の地代を継続的に得ているものの利益が生じていません。
 措置法通達37?3《事業に準ずるものの範囲》における取扱いでは、事業に準ずるものとは、対価から経費を控除してなお相当の利益が生ずるような対価を得ているものをいうと取り扱っています。
 甲の転貸借地権に関しては、利益が生じていませんので、小規模宅地等における貸付事業用宅地等として選択することに無理があると考えますが、それでよいでしょうか。
3. 甲が乙に対して貸し付けていることについて、利益が生じていないことを理由に貸付事業用宅地等の選択が認められない場合には、他の小規模宅地等の要件に適うものがあるかを考えると、生計を一にしていた親族の特定居住用宅地等及び貸付事業用宅地等を検討することができますが、それらは乙が甲の借地権を無償で利用していることが要件として求められています(置法通達69の4?4(2)、69の4?7(1))。本件では、乙が甲へ賃料を支払って利用していることから、小規模宅地等の選択ができないと考えるべきでしょうか。

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1. 使用貸借 甲が………
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