コロナ禍による企業間の補償金

※ 事例の内容は発行日時点の情報に基づくものです

[質問]
(事実関係)
 A社は建設業を営んでいます。
この3月、県内での工事を受注し予定どおり完了しました。
 当工事現場は当社から遠隔地にあったため、当工事担当の社員(監督職)及び当該社員と常にチームを組んで活動する専属下請法人B社の社員数名を長期出張させ、工事完了とともにそれぞれ帰社しました。
 A社は宿泊地を含む工事現場の場所等が、今般の新型コロナウイルス感染症(以下「コロナ禍」という。)の多発した地域内にあったことから、帰社後に発症した場合の対応に備え、自衛措置として当該社員を職務命令により帰社直後から2週間自宅待機させる一方、同様の措置をB社にも要請し、結局B社は自社社員の自宅待機に伴い発生する損失(無収入のまま当該チームの体制を維持するための損失であり、その主な内容は待機社員の労務費である。)相当分の補償を受けることを条件にこれに応じています。
 なお、両社(注)はかねて締結していた工事取引基本契約に盛られている臨機の措置の条項(A社は災害防止その他やむを得ないときはB社に所有の臨機の措置ができるというもの)に準じて処理することとし、その補償金額も客観性のあるものとして両社合意する予定です。
(注)両者間に資本関係及び役員等の人的関係はありません。


(検討と質問)
 当補償金の損金性については下記①、②の考え方があるものと考えますが、質問者は今回の支払いの背景を考慮しますと②で処理するのが妥当と考えていますが、確信が持てません。
① 今回の補償金の内容は、B社の損失補填ですが、その理由が法令や判決又は行政等の指導に基づくものでないこと、また、自衛の措置という観点ではB社は自社の責任で対処すべきものである(つまり、要請に応じたとしてもA社が損失を補填する理由は薄い。)と考えられることから、税務上は基本的には寄附金として処理すべきと考える。
② 今般のコロナ禍の重大性や拡大防止に向けた国、地方公共団体の取組みに対して、個人はもとより企業も適切な対応を求められていること及び企業統治(適切なリスク管理)の観点からも今回の自宅待機は妥当な判断であると考えられ、また、A社の一部門としての機能を果たしているB社に対し、補償金を支払ってでも自宅待機を要請することは社会通念上合理性のある行為と認められるものと考えます。
 したがって、当補償金はA社が自社社員の自宅待機に伴う損失の発生と同様の損失を負担したものとする考え方とともに、一方、損害賠償金としての性格(B社はA社の要請に応じざるを得ない中で発生した損失の補償を求めたもの)も兼ね備えていると考えられます。
 以上から、いずれにしても当補償金は税務上も損金として処理してよいと考えます。


 

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 今回の新型コロナウ………
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