貸倒損失の計上時期について

※ 事例の内容は発行日時点の情報に基づくものです

[質問]
 会社の金員を横領した社員が会社に与えた損害に関し、損害賠償請求権の時効が成立した場合の会計処理と税務処理についてご教示ください。
(経緯)
① A社の経理担当Sは、平成22年1月13日に体調不良を理由に退社した。
② 退職後、社内の経理調査でSの不正が発覚した。代表者がSを訪問し、問い詰めたところ横領の事実を認めた。
③ Sが横領した金額は4,318万円である。会社は長期貸付金としてBS上に計上している。
④ 当該長期貸付金については、毎期同額の貸倒引当金を計上しており、税務上は全額を別表加算して否認している。
⑤ A社は、Sに対する訴訟を起こした。平成22年6月28日に当該損害賠償事件の判決言い渡しがありSは収監された。
⑥ Sの出所後の行動は不明で、身元保証人の姉のもとに同居していると推察されたため、A社は連絡を取ろうとしたができないでいる。身元保証人の父親は高齢であり連絡が取れない。
⑦ 当方は裁判後の平成22年9月からA社の顧問税理士となり、上記事実がわかったため、税理士会の顧問弁護士に相談した。
 相談内容:法律上の請求権の維持をするために会社がとらねばならない事。
      本人の状況と弁済の意思確認をどのような頻度で行うべきか。
 弁護士のアドバイス:時効消滅のアクションを取る
 (1) 裁判をもう一度行う。
 (2) 本人に面会できれば「債務の承認」文書を取り交わす。
 (3) 本人の所在を調査し、弁済の約束をさせ、文書を作る。約束を破った場合は、強制執行(不動産、給与、預貯金の差し押さえ)を行う。
⑧ 令和2年7月に請求権が消滅してしまうために、会社は再度裁判を行うことにした。一方内容証明の郵便を所在のわかる姉のもとに送ったり、訪問も継続して行っているが、面会できない状況である。
(質問)
 二度にわたる裁判費用や調査費用等がかさみ、A社の経営を圧迫していることから、今後時効を消滅させないための努力は経済的・労力的に続けることができない可能性が大です。
 今後、時効が成立してしまった場合、A社はA社が有する上記金銭債権について、法人税法基本通達9-6-2(回収不能金銭債権の貸倒れ(事実上の貸倒れ))に従い、貸倒れ(回収不能)として損金処理をして問題はないでしょうか。

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 法人税における貸倒………
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