死亡保険金の受取人の実質判定について

※ 事例の内容は発行日時点の情報に基づくものです

[質問]
【設定】
・ Aは米国に住所を有し、2019年7月14日に同国で亡くなり相続発生。
 親族はAの母、Aの妹、Aの弟の3名。3名は日本に住所を有している。
 米国にてプロベイト手続きが行われた。
(プロベイト手続き=裁判所の任命した人格代表者が行う被相続人の債権債務の清算、相続財産の分配等を行う米国での主要な相続手続き)
 その後、現在は日本において、相続税の申告業務に取り掛かっている。
・ 日本の相続における法定相続人はAの母のみ。
・ 被相続人Aは、Aの雇用主である海外の大学を通し、海外の生命保険Xに加入している
当該生命保険Xの被保険者はA。
・ 生命保険Xについて受取人指定は無く、本来であれば保険契約により保険金が配偶者、子供、両親、兄弟の順番で支払われるものであったが米国居住者でない者の受け取り手続きが非常に複雑であることからエステート(裁判所の任命した人格代表者)に直接払い出してもらうために、Aの母、Aの妹、Aの弟は受取人としての権利を放棄している。
 これより、当該生命保険契約Xの死亡保険金の受取人はエステート(裁判所の任命した人格代表者)となっている。


【問題提起】
 生命保険Xにかかる死亡保険金を手続きの便宜上、一旦エステート(裁判所の任命した人格代表者)が受取っているが、現実にはAの母が全額受領している場合、日本での相続税申告において、Aの母が当該保険金を取得した保険受取人であると解して差支えないか。


【当事務所の見解】
 相続税法通達3-12より保険契約上の保険受取人以外の者が現実に保険金を取得している場合において、保険受取人の変更手続きがなされていなかったことにつきやむを得ない事情があると認められる場合など、現実に保険金を取得したものがその保険金を取得することについて、相当な理由があると認められるときには、保険契約又は保険約款により保険金を受け取る権利を有する者であるかにかかわらず、現実に保険金を取得したものを保険金受取人とするものとすると規定されております。
 これより、本案件において米国居住者でない者(Aの母)の保険金の受取り手続きは非常に複雑であり、かつ、Aの母は法定相続人であることから、保険受取人の変更手続きがなされていなかったことにつきやむを得ない事情があると認められ、また、当該保険金を取得することについて相当な理由があると考えられます。
 以上より、Aの母は生命保険Xにかかる死亡保険金の受取人であると考えます。

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 照会文にある米国の………
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