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第196回 継続雇用者の定義における「一般被保険者」とは ~賃上げ等促進税制を正しく適用するために~

■賃上げ等促進税制における「継続雇用者」

平成30年度税制改正により創設された賃上げ等促進税制では、継続雇用者給与等支給額の計算における「継続雇用者」の定義が抜本的に見直されています。継続雇用者とは、適用年度およびその前事業年度の期間内の各月において給与等の支給を受けた国内雇用者として政令で定めるものをいいますが、政令で一般被保険者に該当する者に限るとされており、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」9条1項2号に規定する「継続雇用制度対象者」を除くと規定されています。

例えば当期も12ヵ月、前期も12ヵ月であった場合、当期および前期の24ヵ月すべての月分について一般被保険者として給与等の支給を受ける国内雇用者を継続雇用者と定義し、たとえ一部の期間でも「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」9条1項2号に規定する「継続雇用制度」の対象になっている者を除くということになります。ここで注意しなければならない点は、上記の例において、24ヵ月のうち1ヵ月でも一般被保険者として給与等の支給を受けていない者は、継続雇用者ではないということになります。

旧所得拡大促進税制では、一般被保険者に該当する月分をカウントし、最終的に月別支給対象の合計で除して平均給与等支給額を計算していた、すなわち1人当たりの平均給与で判定する取扱いであったわけですが、平成30年度税制改正による賃上げ等促進税制では、24ヵ月分すべてについて一般被保険者として支給を受けた国内雇用者のみをピックアップするので、1人当たりの平均を計算する必要もありません。その適用年度に判定した同一の継続雇用者に係る当期の継続雇用者給与等支給額の総額と前期の継続雇用者給与等支給額の総額を比較して増加割合を確かめれば足りるわけです。この点、実務負担の大幅な軽減につながると思われます。

■一般被保険者とは

一般被保険者を正しく理解するためには、雇用保険法の規定を正確に理解する必要があります。雇用保険法では、①1週間の所定労働時間が20時間未満の者および②同一の事業主の適用事業に継続して31日以上雇用されることが見込まれない者、以上の①および②の者は被保険者に該当しないとしています。

上記の①および②以外の者が被保険者になりますが、被保険者のうち高年齢被保険者、短期雇用特例被保険者および日雇労働被保険者を除く被保険者を一般被保険者と規定しています(雇用保険法60条の2第1項1号)。

被保険者のうち高年齢被保険者、短期雇用特例被保険者および日雇労働被保険者のいずれでもない者は、一般被保険者に該当する者ということになります。税務上、雇用保険に加入する手続をしているか、または保険料を納付しているかどうかは関係がなく、上記の一般被保険者に該当する者をとらえて継続雇用者を識別する必要があります。

被保険者でない者

・1週間の所定労働時間が20時間未満の者

・同一の事業主の適用事業に継続して31日以上雇用されることが見込まれない者

被保険者

a.高年齢被保険者(65歳以上の被保険者であり、b、cを除く者)

b.短期雇用特例被保険者(季節的な仕事に期間を定めて雇用される者のうち一定の者であり、cを除く者)

c.日雇労働被保険者(日々雇用される者または30日以内の期間を定めて雇用される被保険者)

d.一般被保険者(被保険者のうち上記のaからcのいずれにも該当しないものであり、加入手続をしているかどうかは関係ない。)


■継続雇用制度対象者は除外

 「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」9条1項2号に規定する「継続雇用制度」の対象者を除くとされていますので、定年が65歳未満の会社で、65歳未満で定年退職した者を対象とする継続雇用制度を採用している会社の場合、前事業年度および適用年度のいずれかの月において継続雇用制度対象者に該当する場合は、継続雇用者に該当しないものとされます。前事業年度および適用年度のうちたとえ1ヵ月でも継続雇用制度の対象になっている者は除かれます。

 なお、継続雇用制度対象者とは、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」9条1項2号に規定する継続雇用制度の対象である者として財務省令で定める者をいい、それを受けて財務省令で定める者とは、その法人の就業規則において継続雇用制度を導入している旨の記載があり、かつ、次の書類のいずれかにその導入している継続雇用制度に基づき雇用されている者である旨の記載がある場合のその者をいうとされています(措令27条の12の5第14項、措規20条の10)。

・雇用契約書その他これに類する雇用関係を証する書類

・その法人の国内に所在する事業所につき作成された労働基準法第108条に規定する賃金台帳


上記の書類にその導入している継続雇用制度に基づき雇用されている者である旨の記載がない場合は、継続雇用制度対象者にはならない点に留意する必要があります。