社会保険ワンポイント

社会保険に関する旬のトピックスや、注意すべき項目などについて、わかりやすく解説するワンポイントコラムです。(毎月更新)

従業員のワクチン接種対応

 政府は新型コロナ感染の抑止効果を高めるため、4度目の「緊急事態宣言」を東京都に発出しました。また、沖縄の「緊急事態宣言」について延長、「まん延防止等重点措置」は大阪、神奈川、千葉、埼玉においては延長され、いずれも期間は8月22日までとなります。
 この期間中にも、新型コロナ対策の現在のところの切り札である「ワクチン接種」は実施されます。そこで今回は従業員のスムーズな接種の促進、そして接種後の体への負担軽減を考慮した会社の時間的な配慮について、「就業規則対応例」を記載しましたので確認の上、早急に対応いただきたいと思います。

接種後の副反応
 新型コロナワクチン接種に関しては、接種後に注射した部分の痛み、疲労、頭痛、筋肉や関節の痛み、寒気、下痢、発熱等がみられることがあると厚生労働省が発表しています。

発現割合 症状
コミナティ(ファイザー社) モデルナ(武田薬品)
50%以上 接種部位の痛み、疲労、頭痛 接種部位の痛み、疲労、頭痛、筋肉痛
10~50%以上 筋肉痛、悪寒、関節痛、下痢、発熱、接種部位の腫れ 関節痛、悪寒、吐き気・嘔吐、リンパ節症、発熱、接種部位の腫れ、発赤・紅斑
1~10% 吐き気、嘔吐 接種後7日以降の接種部位の痛みなど

(厚生労働省HP 新型コロナワクチンQ&Aより抜粋)

 上記のような症状の大部分は、接種後数日以内に回復していると記載されていますが、業務への悪影響は避けたいところです。

会社としての配慮策
 自社従業員の方が新型コロナワクチンを安全に摂取、および接種後の体調不良等に関して厚生労働省のQ&Aでは休暇や労働時間についての配慮が推奨されています。
(厚生労働省HP 新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)

 そこで、会社として考えられる対策例を以下に記載してみました

①ワクチン接種休暇
 文字通り、ワクチン接種する日を休みとしてしまうものです。無給だとお給料が減ってしまいますので、推奨の観点からは有給の特別休暇制度とすべきでしょう。接種日は予約等で決まると思いますので、あらかじめ会社に届出してもらうことにより、業務の予定も調整できると思われます。

②年次有給休暇の例外利用
 年次有給休暇は就業規則等で「〇日前までに会社に届出すること」と決められているケースがあると思います。しかし、接種後の体調不良等の場合等は、これを事後申請等で認めることにより、柔軟な運用が可能になると考えます。例えば「朝、接種後に出勤しようと思っていたが体調がすぐれなかったため、急遽その日1日を年次有給休暇に切り替えた」等の場合です。

③勤務の中抜けや時間帯の変更
 勤務時間中のワクチン接種に要する時間について賃金控除しない、または、抜けていた時間分については終業後の時間にずらす、等の対応で無駄なく接種と業務の両立を図ることが可能になります。会社によっては近隣の医療機関と連携を取り、当日キャンセルが出た場合は連絡を受けて自社従業員をワクチン接種させているところもあります。

就業規則の変更
 上記の特別休暇制度や年次有給休暇制度の例外利用はワクチン接種の促進に効果があると思いますが、休暇制度や労働時間の変更となるため、実際の使用や運用には「就業規則の変更」が必要になります。以下、その例を記載しておきます。

【就業規則対応例】

<年次有給休暇対応例>
第〇条(ワクチン接種休暇)
 令和3年〇月〇日から令和4年〇月〇日までの間に新型コロナワクチンを接種する者は、原則として会社に事前に届出することにより期間内に2日まで、ワクチン接種日に特別休暇(有給)を取得することができる。但し当該日が所定休日の場合は通常の休日扱いのままとなる。

<ワクチン接種休暇対応例>
第〇条(年次有給休暇の例外)
 第〇条の年次有給休暇規定にかかわらず、令和3年〇月〇日から令和4年〇月〇日までの間に新型コロナワクチンを接種する者および当日接種した者については、〇日前までの年次有給休暇届出の例外とし、接種日当日の年次有給休暇の取得を会社は認めることとする。ただし、会社が必要と認める場合はワクチンを接種したことの証明書類を事後に会社に届出しなければならない。

<中抜けを許可する例>
第〇条(所定労働時間の例外)
 第〇条の所定労働時間および賃金規程第〇条に関わらず、令和3年〇月〇日から令和4年〇月〇日までの間に所定労働時間内で新型コロナワクチンを接種する者については、あらかじめ会社の許可を得ることにより、接種に要する時間について賃金控除の対象としない。

<労働時間を変更する例>
 第〇条の所定労働時間に関わらず、令和3年〇月〇日から令和4年〇月〇日までの間に所定労働時間内で新型コロナワクチンを接種する者については、あらかじめ会社の許可を得ることにより、接種に要した時間分、本来の終業時間後に労働することで当該日の労働時間を満たしたこととする。

まとめ
 東京で4度目の緊急事態宣言が出されるなど、多くの企業での業績悪化や雇用不安が懸念されています。この状態を1日も早く脱するためにも会社担当者の方は従業員の新型コロナワクチン接種へのご配慮をお願い致します。

小野先生.JPG
特定社会保険労務士
小野 純

一部上場企業勤務後、2003年社会保険労務士小野事務所開業。2017年法人化。企業顧問として「就業規則」「労働・社会保険手続」「各種労務相談」「管理者研修」等の業務に従事。上記実務の他、全国の商工会議所、法人会、各企業の労務管理研修等の講演活動を展開中。
主な著作:「従業員100人以下の事業者のためのマイナンバー対応(共著)」(税務研究会刊)、「社会保険マニュアルQ&A」(税研情報センター刊)、「判例にみる労務トラブル解決のための方法・文例(共著)」(中央経済社刊)、月刊誌「税務QA」(税務研究会)にて定期連載中。当コラムは2015年1月より担当。
ホームページ 社会保険労務士法人ソリューション http://www.solution.or.jp/

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2021年08月05日

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