今月の実務の動き(人事労務)

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労働者の発熱と休業 ~休業手当の支払いの要否~

 img_jitsumu_0098.jpg厚生労働省は、「新型コロナウィルスに関するQ&A」を策定し、発熱があり自宅待機する場合における休業手当の支払いの要否について次のように整理しています。

 ① 発熱があり、労働者が自主的に休む場合 → 通常の病欠と同じ扱いになる(手当の要否は会社の規程の定めによる)。
 ② 発熱などの症状があることのみをもって一律に労働者に休ませる措置を取る場合 → 労基法上、休業手当の支払いを要する。
 ③ 「帰国者・接触者相談センター」での相談結果を踏まえて職務の継続が可能と判断されたものの、使用者の自主的判断で休ませる場合 → 労基法上、休業手当の支払いを要する。
 ④ 都道府県知事が行う就業制限により休業する場合 → 労基法上、休業手当の支払いは不要

 このうち、①、③、④については特段異論のないところと思われます。
 一方で、②については解釈が分かれるのではないかと思われます。
 ②の見解はその前提として、「発熱していても就労は可能である」という価値判断が存在することになります(就労は可能であるのに使用者が休ませているため、「使用者の責に帰すべき休業」に該当し、休業手当の支払いを要することになる)。

 しかし、厚生労働省が、「労働者が発熱していても就労は可能である」という価値判断を前提にしていることについては、医学的に妥当な価値判断といえるのかどうかということについてより詳細な説明が必要なのではないかと思われます。

 たしかに、多少身体がだるい等といったことはしばしばあるでしょうし、だからといって職務の継続が不可能であるとまではいえない場合もあり得るかとは思われますが、それが「発熱」という具体的な症状を伴っている場合にも同様に当てはまるのか、という点については、たんなる感覚論・感情論ではなく、医学的な知見をもって安全配慮の観点から丁寧に説明する必要があるのではないでしょうか。

 厚生労働省は結論を述べるのみであり、その結論に至る具体的な理由について何ら言及していませんが、少なくとも②の見解を公にしている以上、「多少の発熱であれば働かせても医学上の危険性はほとんどなく、安全配慮義務の観点からも問題ない」という価値判断を前提にしているものと解釈するほかないでしょう。

 これでは、発熱も含めて多少の体調不良では、自主的に休んだ場合に休業補償がなく労働者としても休みづらくなるため、無理して出社することにつながり、ひいては新型コロナウィルスの症状があまり出ていない者が出社のために出歩くケースが増加し、ウィルスの蔓延という事態を引き起こすおそれすらあることによるものと考えられます。