今月の実務の動き(人事労務)

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派遣労働者と同一労働同一賃金の問題

img_jistumu_0094.jpg令和元年7月に、派遣労働者の同一労働同一賃金につき、労使協定方式で定めるべき事項に関する通達が示されました。

令和2年4月1日に施行される改正派遣法では、派遣労働者の同一労働同一賃金に関して、派遣先均等・均衡方式と派遣元労使協定方式という2種類の方法を定めています。
派遣先均等・均衡方式とは、派遣先の通常の労働者との間で労働条件について均等・均衡を図るものであり、派遣元労使協定方式とは、派遣元で法令の定めに従った労使協定を締結する方法です。
派遣労働者に関しては、上記いずれかの方法により同一労働同一賃金を実現する必要があります。

このうち派遣先均等・均衡方式に関しては、派遣先が派遣元に対して、①比較対象労働者の「職務の内容」「当該職務の内容および配置の変更の範囲」「雇用形態」、②比較対象労働者を選定した理由、③比較対象労働者の待遇のそれぞれの内容、④比較対象労働者の待遇のそれぞれの性質および当該待遇を行う目的、⑤比較対象労働者のそれぞれを決定するにあたって考慮した事項について、情報を提供する必要があります。

しかし、比較対象労働者の選定方法は、裁判においても解釈に争いが生じている問題であり、派遣先の責任でその選定を行うことには一定のリスクがあるものと考えられます。また、様々な待遇に関する性質、目的、決定にあたって考慮した事項についても、裁判で多様な解釈論が展開されているところであり、派遣先の責任において明確に情報提供することは難しいものと考えられます。
このため、派遣先の中には、労使協定方式を採用している派遣元としか労働者派遣契約を締結しないという対応方針を固めているところも出てきています。
そのため、派遣元にとっては、今後の事業運営を考えていく上でも労使協定方式の解釈は非常に重要になります。

労使協定方式を採用する場合に、労使協定で労働条件についてどのような定めをすべきであるかということについては、通達で明らかにされています。通達で定める基準に達していない労使協定では、労使協定方式の要件を満たさず、派遣先均等・均衡方式が適用されることになり、派遣先としては上記のとおり広範な情報提供義務を負うことになります(ただし、その場合にどの段階から派遣先の情報提供義務が生じるのかは解釈上議論の余地があります)。
したがって、派遣元のみならず派遣先にとっても、労使協定方式に関する通達の内容は重要になるものと考えられます。

通達は、①家族手当等を含む基本給・賞与等、②通勤手当、③退職手当の3つについて、同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(一般賃金といいます)以上の待遇を定めることを求めています。
一般賃金は、政府等の統計をもとに定められています。そのため、解釈上の争いは生じづらいと考えられますので、通達に掲載された統計資料を熟読する必要があるでしょう。また、一定の要件を満たす場合には通達の示す統計以外の統計も用いることができるものとされているため、今後は、そのような統計としてどのようなものが利用可能となり得るのかということも注視されます。