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租税回避は阻止できないの?<3分で読める税金の話>

前回のコラムをお読みになった方から、租税回避を事前に阻止できないのか、というご質問を受けましたので、今回のコラムはそれに対する私なりのお答えと、日本の税金のルールを取り上げてみたいと思います。

租税回避とは

まず、租税回避の定義からまいりましょう。法律上明確な定義があるわけではないのですが、「私法上の形成可能性を異常または変則的(「不自然」)な態様で利用すること(濫用)によって、通常用いられる法形式に対応する税負担の軽減または排除を図る行為」といわれています。難しいので意訳しますと、税法の抜け穴をついて税金から逃れること、といったところでしょうか。法が予定している範囲で税負担の軽減を図る節税とは性質が異なります。

日本は租税法律主義

租税回避は税金逃れだ、けしからん、と課税したくとも、法に違反していませんので課税できないのです。その根拠は憲法にあります。

憲法には、第30条「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。」、第84条「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」という条文があり、これを根拠として日本は「租税法律主義」をとっているといわれています。

租税法律主義のおかげで国民は、どのような場合にいくら税金を課されるのかを事前に知ることができるという予測可能性が保障されています。また、課税庁は文章として書かれた法律に基づいてしか課税できませんから、課税庁の行き過ぎた課税権の行使に歯止めがかけられ、法的安定性が保たれることになります。

最高裁も租税法律主義を重んじている

租税回避では課税庁が裁判で負けた武富士事件と呼ばれる有名な事件があります。納税者を勝たせたものの最高裁としても武富士事件の結論を是としているわけではなく、「法の解釈では限界があるので、そのような事態に対応できるような立法によって対処すべきものである」としています。

課税庁は現在運用されている法の中で課税するしかない

立法者も様々なケースを想定して立法しているはずですが、税負担から逃れたいと思うのは人情でしょう。抜け穴を探して、税金を逃れる人はどうしても出てきます。それに対して、課税庁ができることは現在運用されている法の中で戦うことだけ。現在の日本では租税回避スキームが流行りだすと、それに対して立法するといった後手後手の対応となっています。前回コラムの消費税の改正に次ぐ改正を見ればおわかりかと思います。

伝家の宝刀「行為計算否認規定」を抜けない課税庁

我が国には、行き過ぎた節税や租税回避に対して、「同族会社等の行為又は計算の否認」や「組織再編成に係る行為又は計算の否認」(その行為又は計算を否認し、税務署長がその法人の課税標準、欠損金額又は法人税額を計算することができることとする同族会社の行為計算否認規定)といった特定の分野を対象とした租税回避に対応する一般的な否認規定はあるものの、全ての分野・取引等に係る租税回避行為を包括的に対象とする一般的否認規定は存在しません。加えて、行為計算否認規定の適用に当たっては、その要件としての「同族会社の行為又は計算」や「税負担の不当減少」等の不確定概念の解釈について、過去から課税庁と納税者との間で争いが絶えない状況にあるため、課税庁もおいそれと伝家の宝刀を抜いてはこないのです。

おわりに

諸外国では、租税回避行為への対応策として、全ての分野・取引等に係る租税回避を包括的に対象とする一般的否認規定により、納税者の選択した法形式にかかわらず経済的実体に即した課税を行う国もあります。日本においても導入検討が必要であると議論されていますが、課税庁の裁量拡大の引き金ともなりかねないため、まずどのような行為が租税回避とされるのかが特定される必要があるでしょう。一般的否認規定と租税法律主義との整合性は保たれるのか。国民はしっかりと目を見開いていかなくてはならないのです。


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税理士 高山 弥生

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