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譲渡所得を計算するときの基本のキ partⅢ<3分で読める税金の話>

譲渡所得を計算するときの基本のキ partⅠ はこちら
譲渡所得を計算するときの基本のキ partⅡ はこちら


3回に渡ってお届けしてきた「譲渡所得を計算するときの基本のキ」もいよいよ最終回です。
今回は土地建物売却時の特別控除を中心にお話していきます。

土地建物を売却した場合、要件にあてはまると特別控除が受けられる場合があります。特別控除は複数ありますが、マイホームを売った場合の3,000万円の特別控除(措法35条1項(2項該当))が身近と思いますので、今回はこの3,000万円の特別控除についてご説明します。

マイホームを売った場合の3,000万円の特別控除

マイホームを売却するということはいろいろと大変だからでしょう、ということで設けられている特例です。バブル期であればともかく、最近ではマイホームを売却しても3,000万円を超えて利益が出ることは少なく、この特例のおかげで納税が発生することはあまりないのですが、適用可能であれば、の話ですから要件にあてはまるかどうかをしっかりと確認する必要があります。

マイホームの定義

マイホームは実際に住んで生活していた家のことであり、この特例を受けるためだけに入居した家や別荘などはマイホームとして認められません。住民票があるからといってその家がマイホームに該当するとは限らず、反対に住民票がないマイホームであっても、郵便物や公共料金などの使用状況で生活の拠点であることを示すことで適用可能な場合もあります。

いつまでに売却すればいいの?

マイホームに住まなくなった日から3年を経過する日の属する12月31日までに売却する必要があります。建物を解体した場合には取り壊した日から1年以内に譲渡契約をし、駐車場賃貸などに供していないことが要件となります。ここでの「住まなくなった日から3年を経過する日の属する12月31日まで」とは、住まなくなってからお正月は3回まで、4回数えたらアウトということになります。

その他の特例との兼ね合い

売却した前年及び前々年に、3,000万円の特別控除(措法35条1項(3項により適用する場合を除く))、買換え(交換)の特例(措法36条の2、措法36条の5)、譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例(措法41条の5、措法41条の5の2)の適用を受けている場合、3,000万円控除は受けることができません。措法39条(相続税額の取得費加算の特例)との併用は可能です。

また、措法35条3項(相続した空き家を譲渡した場合の3,000万円特別控除)と併用可能ですが、両者合わせて3,000万円が上限となります。措法35条3項は措法39条との併用はできないため、同じ3,000万円の控除ですが、気を付けたいところになります。

住宅ローン控除とは相性が悪い

住宅ローン控除(措法41条)は、新しいマイホームに住み始めた年とその前後の2年ずつの5年間に、この3,000万円の特別控除の適用を受けた場合は適用不可となります(措法35条3項を除く)。これは旧住居の譲渡に伴い新住居を取得することが通常であり、新旧どちらの住居に対しても特例を認めるのは適当ではないという趣旨によるものです。売却時期から過去2年以内に新しいマイホームを購入し住宅ローン控除を受けているが、思いのほか利益が出るため3,000万円特別控除を受けたい場合、過去の住宅ローン控除を受けた年分の所得税について修正申告をする必要があります。

この制度には抜け穴があり、両特例の併用適用が認められる時期がありましたが(新しいマイホームを取得し住宅ローン控除を受け、旧住居に住まなくなった日から3年目に旧住居を売却し3,000万円特別控除を受ける)、制度の趣旨に鑑みると合理的ではなく、必ずしも必要最小限のものとなっていないとの会計検査院からの指摘を受け、令和2年度税制改正により2020年4月1日以降に旧住居を譲渡し3,000万円の特別控除を適用した場合、新しいマイホームに住宅ローン控除を適用できなくなります。今後、3,000万円特別控除と住宅ローン控除のどちらが有利かという相談がさらに増えそうです。

チェックシートを活用しよう

3,000万円特別控除をはじめとする措置法の特例を適用したい場合には、東京国税局が提供しているチェックシートを活用しましょう。

東京国税局 資産税(相続税、贈与税、財産評価及び譲渡所得)関係チェックシート等
https://www.nta.go.jp/about/organization/tokyo/topics/check/r01/01.htm

添付書類なども記載してありますので非常に便利です。特例は納税者にとってありがたいことですし、会計事務所としては腕の見せ所となりますが、実は適用できなかったとなると追加の納税や延滞税の発生でトラブルとなりかねません。適用要件を満たしているかどうか、十二分にチェックして申告しましょう。

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